無農薬無肥料栽培(自然栽培)までの歩みと現在の栽培方法

【現在の栽培方法の結論】無農薬・無肥料栽培(自然栽培)は冬期の複数回耕起で安定しました(最新版)

土の生命力を信じ、引き出す「無農薬・無肥料栽培」

米農家中西では、農薬や化学肥料はもちろん、動物性の有機肥料も一切使用しない「自然栽培」に取り組んでいます。当農家が目指すのは、肥料で太らせたお米ではなく、土本来の力でたくましく育った、生命力あふれるお米です。

1. 独自の土づくり:冬期月1回の「深呼吸」

「無肥料は何もしないこと」ではありません。私は、稲が休んでいる冬の間こそ、土との対話が重要だと考えています。

  • 冬期耕起(10月〜3月 / 月1回) 厳冬期に月1回、丁寧に田んぼを耕します。これにより、土の中に新鮮な酸素を送り込み、肥料の代わりとなる「好気性微生物」の活動を助けます。
  • 寒さを味方につける 土を反転させ、伊那の厳しい寒風にさらすことで、病害虫や雑草の種(特に雑草:クログワイの塊根)を自然に抑える「天然の防除」を行っています。

2. データが証明する「土の回復力」

以下のグラフは、私が実際に栽培方法を切り替えた際の玄米の収穫量の推移です。単なる理想ではなく、事実に基づいた米作りを行っています。

  • 2016年(450kg/8a):発酵鶏糞(120kg)を使用していた時期
  • 2017年(200kg/8a):無肥料に転換し、秋の1回耕起のみだったため、収量が激減
  • 2018年〜(350kg/8a〜)冬期耕起を月1回取り入れたことで、無肥料のまま収量がV字回復しました

この結果は、人間の知恵(管理)と土の生命力が合致したときに、お米は自律的に育つことができるという証明です。

3. 安心・安全へのこだわり

  • 農薬・除草剤:不使用 田んぼの生態系を壊さないよう、一切の薬剤を使用しません。
  • 肥料(化学・有機):不使用 外部からの資材に頼らず、田んぼの中での資源循環を大切にしています。

当農家では冬期に複数回(目安:5〜6回)の深耕起を行い、肥料・農薬を使わずに稲を育てています。耕起により稲わらの分解と微生物の活性化を促し、無肥料でも安定した収量を確保できるようになりました。

冬期複数回耕起を実施後、無肥料でも平均300〜350kg(玄米重量)/8a前後を確保できるようになりました。

冬期複数回耕起の導入前後の収量比較

初年度(冬期耕起1回)は収量が極端に低下しましたが、毎年6回の冬期耕起を続けた結果、収量は増加し、無肥料でも安定するようになりました。

無農薬・無肥料栽培の玄米の収穫量推移(kg/8アール)

無農薬・無肥料栽培の玄米の収穫量推移(kg/8アール)

年度 栽培方法 収量(kg/8a)
2016年発酵鶏糞散布450
2017年無肥料(秋の耕起1回のみ)200
2018年無肥料(冬期耕起複数回)350
2019年無肥料(冬期耕起複数回)300
栽培区分・年度玄米収穫量/8アール評価備考・コメント
慣行栽培(長野県平均)約 424 kg基準農薬・化学肥料を使用する一般的な基準値(10aあたり530kg換算)。
2016年:発酵鶏糞120kg散布408kg優秀無農薬・有機肥料栽培。慣行栽培の基準に迫る非常に高い収穫量。
2017年:無肥料(秋耕起1回)168kg試練無肥料栽培への挑戦初年度。
2018年:無肥料(冬期複数回)384kg躍進冬期の複数回耕起が功を奏し、無肥料ながら驚異的な回復を見せた年。
2019年:無肥料(冬期複数回)288kg安定自然栽培としての地力が定着。環境と調和した持続可能な収量の形。
一般的な有機栽培約 280kg標準全国の無農薬・有機肥料栽培における平均的な指標。
自然栽培(無肥料)約 240kg目標肥料を一切与えない栽培方法での全国的な平均指標。

現在の自然栽培のスタイル(要点)

  • 冬期湛水・不耕起栽培に注力した時期に実践した冬期の微生物の活動で土が肥える知識を活かしている
  • 冬期:複数回深耕起(年間5〜6回を目安)による雑草塊根駆除・稲わらの分解・土ごと発酵の促進
  • 無肥料・無農薬での栽培
  • 乾土効果を活かした土作り
  • 冬期の微生物の働きを重視した自然循環型

現在の無農薬で有機肥料を使った栽培のスタイル(要点)

  • 無農薬栽培を始めた当初注力し、実践した”有機発酵肥料作り”の知識が活きている
  • 秋収穫後:発酵鶏糞を散布(微生物の餌として与える程度 ⇒ 稲わらを分解してもらう)
    • 発酵鶏糞は臭い⇒まだ未熟 ⇒ 微生物の餌としては未熟なものが良い ⇒ 冬期に微生物による発酵が進む余地がある。(重要なポイント)
  • 発酵鶏糞散布後、一回耕起して、土・稲わら・発酵鶏糞を混ぜる
  • 冬期:土・稲わら・発酵鶏糞が ”土ごと発酵” する。
  • 無農薬での栽培
  • 冬期の微生物の働きを重視した自然循環型

現在の減農薬で有機肥料を使った栽培(特別栽培米)のスタイル(要点)

  • 秋収穫後:発酵鶏糞を散布(微生物の餌として与える程度 ⇒ 稲わらを分解してもらう)
    • 発酵鶏糞は臭い⇒まだ未熟 ⇒ 微生物の餌としては未熟なものが良い ⇒ 冬期に微生物による発酵が進む余地がある。(重要なポイント)
  • 発酵鶏糞散布後、一回耕起して、土・稲わら・発酵鶏糞を混ぜる
  • 冬期:土・稲わら・発酵鶏糞が ”土ごと発酵” する。
  • 減農薬での栽培
  • 冬期の微生物の働きを重視した自然循環型
  • 消費者目線に立った良心的な価格のお米の提供

ここから下は、現在の栽培方法に至るまでの歩みを時系列的に説明します。

無農薬無肥料栽培(自然栽培)への20年の歩み

2003年に無農薬米の栽培を始めて以来、「雑草を抑えながら収量を安定させる」という課題に向き合いながら、無肥料の自然栽培米へと到達するまで、20年以上にわたり試行錯誤を続けてきました。
本ページでは、無農薬栽培の初期から現在の無農薬無肥料栽培に至る流れをまとめています。

2003〜2008|雑草対策と有機発酵肥料の習得期(無農薬米の基礎を築いた時期)

無農薬米の栽培初年度は、雑草が繁茂するのをただ見ているしかありませんでした。
2年目は手取り除草に追われ、3年目にエンジン式初期除草機を導入。無農薬栽培では「除草作業をどう効率化するか」が最大のテーマとなりました。

同時に、自然界の発酵の仕組みに魅力を感じ、米ぬかや菜種かすを用いた独自の有機発酵肥料づくりにも没頭。
この時期は、無農薬栽培と有機農法の両立を目指し、収量向上のための基礎を作った期間でした。

2004〜2013|冬期湛水 × 不耕起栽培の探求(自然栽培米の理想形を模索)

冬期湛水と不耕起を組み合わせた栽培方法を本格的に導入。
イトミミズが活性化することでトロトロ層が形成され、この層が雑草の発芽を抑制。

「無農薬米の理想形ではないか」と期待が高まった時期で、自然栽培米の基礎として注目した方法でした。

2012〜2017|クログワイ問題の顕在化(無農薬栽培の大きな壁)

クログワイは地中の塊根から何度でも発芽するため、除草機で水面に出た茎を攪拌しても完全には除草できない、最も難防除の雑草のひとつです。
冬期湛水のあいだも塊根は土中で生き続け、水分を好むため、生育条件が整うと再び芽を出します。

写真では、手のひらに載せたクログワイの塊根と、成長した茎を手に持っている様子が写っています。
無農薬・自然栽培で無農薬米を育てるうえでも、この雑草対策は大きな課題となります。

手のひらに載せたクログワイの塊根と、成長した茎を手に持っている様子

しかし、冬期湛水の田んぼではクログワイだけが防除できず、年々増加。
イトミミズによるトロトロ層は効果を発揮しているものの、クログワイには無力で、無農薬栽培としての限界が露呈した時期でした。

クログワイが繁茂曽田田んぼ。クログワイの中で、稲の苗が育っていない。

2017|不耕起を中止し、冬の複数回耕起へ転換(新しい無肥料栽培の土台)

前年の冬期複数回耕起で、寒さと乾燥で死滅したクログワイの塊根

クログワイの塊根が「寒さと乾燥」に弱いことに着目。
冬の間に深耕起を複数回行い、塊根を地表に出して凍結・乾燥させる方法へ転換しました。

この転換が、後の無農薬無肥料栽培(自然栽培米)の安定化につながる重要な一歩となりました。左の写真は、前年の冬期複数回耕起で、寒さと乾燥で死滅したクログワイの塊根です。

2018〜現在|乾田効果 × 無肥料で収量安定(無農薬無肥料栽培の確立)

冬期の複数回耕起による「乾土効果」が発揮され、
稲わらの分解が進み、微生物が活性化。結果として、無肥料でも収量が安定していきました。

無農薬米・自然栽培米としての品質向上にもつながり、現在の栽培方法の基盤が完成しています

まとめ|試行錯誤が現在の栽培方法をつくった

  • 冬期湛水+不耕起で雑草は抑制できた
  • しかしクログワイだけが防除できず崩壊
  • 冬の複数回深耕起で土壌が生まれ変わり、無肥料でも収量が安定
  • この20年の試行錯誤が、現在の無農薬無肥料栽培(自然栽培)につながっている
    • 無農薬・有機肥料を使った栽培や減農薬栽培にも冬期湛水・不耕起栽培で実践した”冬期の微生物の働きを利用”が活きている。

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