無農薬米づくりへの挑戦記①|登山で培った観察眼を田んぼへ

私は、長野県伊那谷で20年以上、
無農薬・減農薬米づくりに向き合ってきた米農家です。
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私は長年、登山を続けてきました。
山では、地形や風、雲の流れ、足元の岩の質までを観察しながら、
一歩先の判断を積み重ねて進んでいきます。
無農薬米づくりも、私にとっては同じです。
自然を力で制御するのではなく、
今、田んぼで何が起きているのかを読み取り、
その時点での最善の一手を選び続けること。
このページは、
私が描いた「無農薬米づくりの設計図」が、
実際の田んぼで今どこまで進んでいるのかを記録する、
現在進行形の進捗報告です。
20年の経験を超えて。なぜ今、新たな「挑戦」を始めるのか
これまで20年、泥にまみれながら無農薬米づくりを続けてきました。
数え切れない失敗と試行錯誤を重ね、一定の栽培技術も身につきました。
それでも、私はまだ満足していません。
この8アール(800㎡)の試験田で、
もっと自然の力を引き出せるのではないか。
もっと植物と生き物に任せた米作りができるのではないか。
そう確信したことが、今回の挑戦の出発点です。
8アールの試験田に賭けた理由
大きな面積ではありません。
だからこそ、土の変化、水の動き、生き物の反応を、
自分の目と感覚で追い続けることができます。
ここは「収量を競う田んぼ」ではなく、
自然循環が本当に機能するかを検証するための田んぼです。
10月14日、決意の種まき
10月14日。
伊那の空は低く、田んぼにはすでに冬の気配が漂っていました。
私は一人、試験圃場に立ち、
ヘアリーベッチの種をまき始めました。
伊那谷の寒さに耐える品種「ナモイ」を選んだ理由
今回選んだヘアリーベッチの品種は「ナモイ」。
寒太郎、まめ助など、他にも選択肢はあります。
しかし過去に数年試した結果、安価でありながら伊那谷の寒さでも確実に育つことを確認できたのが、このナモイでした。
レンゲという選択肢もありますが、播種適期が8月下旬〜9月上旬。
稲刈りと重なるため、今回は選びませんでした。
ヘアリーベッチは10月中であれば確実に発芽します。
収穫後、落ち着いて播種できる点も、伊那谷では大きな利点です。


効率よりも「自分の足と手」で種を届ける理由
30ヘクタール規模の農家であれば、
機械で一気に終わる作業かもしれません。
それでも私は、田んぼを歩き、自分の手で種を落としました。
登山と同じです。
一歩一歩、自分の判断と責任で進む。
その積み重ねが、結果につながると信じているからです。
氷点下10度の冬を越える「数粒の種」
土の上に、わずかに見える茶色い粒。
これが、今回の挑戦の起点となるヘアリーベッチの種です。
彼らはこれから、
伊那の氷点下10度という過酷な冬を越え、
春に爆発的な成長を見せることになります。
ヘアリーベッチから始まる自然循環のバトン
私が期待しているのは、
- アレロパシー(他感作用)による雑草抑制
- 枯れた後に地表を覆う天然のマルチ効果
- それを餌に増えるイトミミズ
- イトミミズが作る「トロトロ層」による保水と抑草
という、一連の自然循環です。
綺麗な言葉を並べるのは簡単です。
だからこそ私は、この数粒の種が実際に田んぼで何を起こすのか、
その過程を隠さず記録していきます。

Climber’s Eyeで見続ける、設計図の進捗報告
冬山で春を待つ高山植物のように、
5cmにも満たないヘアリーベッチの苗は、
今、雪の下で静かに力を蓄えています。
これから、この田んぼに立てた「緑の棒」を基準に、
何が起きているのかを定点観測で報告していきます。
20年の無農薬米づくりの経験と、
冬山登山で培った観察眼。
そのすべてを注ぎ込んだ、
設計図の進捗報告としての挑戦が、ここから始まります。

こうした考え方のもとで育てたお米を、
農家直販でお届けしています。

