無農薬米づくりへの挑戦記④|ベージュ色に染まる田んぼ。ヘアリーベッチが選んだ「究極の冬越し」

無農薬米づくりへの挑戦記④|ベージュ色に染まる田んぼ。ヘアリーベッチが選んだ「究極の冬越し」

私は、長野県伊那谷で20年以上、無農薬・減農薬米づくりに向き合ってきた米農家です。

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1月3日の氷点下7.7度という極限の朝を経て、伊那市の田んぼはさらに厳しい寒さのピークを迎えました。かつては寒さに耐え、深い紫色に染まっていたヘアリーベッチですが、2月半ば、その姿は驚くべき変化を遂げています。

一見すると枯れ果て、生命の灯が消えたようにも見えるベージュ色の景色。しかしその下には、春の爆発的な生長を期する、植物の究極の生存戦略が隠されていました。今回は、この「冬枯れ」という名の休息に込められた、命のたくましさを診ていきます。

伊那市富県の過酷な冷え込みと色の変化

時期最低気温(目安)ヘアリーベッチの状態観察される現象
10月27日約5℃鮮やかな緑色根を広げ、秋の光合成で体力を蓄える時期
1月3日-7.7℃深い紫色アントシアニンを生成し、細胞を寒さから守る防御反応
2月14日-10℃〜0℃ベージュ色地上部をあえて枯らし、**「休眠状態」**へ移行

なぜベージュ色になったのか?植物学的な考察

一見すると、このベージュ色の姿は枯れ果てて死んでしまったように見えるかもしれません。しかし、これはヘアリーベッチが過酷な伊那の冬を生き抜くための**「合理的判断」**です。

  • 地上部の放棄(トカゲの尻尾切り): 氷点下10℃近い冷気が続くと、葉を維持するためのエネルギーコストが生存のリスクになります。そこで、地上部の細胞をあえて枯死させ、水分の蒸散を防ぐシールドへと作り替えたのです。
  • 「心臓部」を守る: 枯れた葉は層となって重なり、地表にある「クラウン(成長点)」を冷気から守る天然の毛布になります。
  • 色素の分解: 細胞が活動を休止したことで、緑色のクロロフィルや紫のアントシアニンが分解され、植物の繊維の色(ベージュ)が表れました。
地上部が枯死したヘアリーベッチ

見えないところで脈動する「強い生命力」

このベージュ色の塊の下では、実は力強い命が息づいています。 登山で例えるなら、今はベースキャンプで嵐が過ぎ去るのをじっと待っている状態。根は地中深くで活力を保っており、3月の雪解けとともに、この枯れ色の隙間から驚くほど鮮やかな**「新芽」**が吹き出してきます。

この「一度枯れたように見えてから復活する」というプロセスこそが、ヘアリーベッチの真の強さ。無農薬米づくりの土壌を豊かにしてくれる、最も頼もしいパートナーの姿なのです。

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