【第5話】不耕起田の難敵・クログワイとの闘い。私がチェーン式から、シャフトドライブ式除草機を選んだ理由

パート1:無農薬栽培の壁、不耕起田に蔓延る「クログワイ」
私が無農薬米づくりに挑む中で、最も苦労したのが「不耕起田(ふこうきでん)」での雑草対策です。
特に頭を悩ませたのが、宿根性の難防除雑草として知られる**「クログワイ」**の繁茂でした。地中深くに塊茎(かいけい)を作るクログワイは、生半可な除草では太刀打ちできません。
2016年までは、初期除草機とチェーン式の2条用除草機を併用して格闘していましたが、不耕起田の硬い土壌と密集する草の抵抗は、想像以上に過酷なものでした。
パート2:チェーン式除草機の限界と、故障の連続

当時のチェーン式除草機は、連日のハードな作業に悲鳴を上げていました。
- 羽根の破損: 硬い土やクログワイの根に負け、除草用の羽根が折れる。
- チェーンの脱落: 泥や異物の噛み込みにより、肝心のチェーンが外れる。
作業中に機械が止まるたび、泥だらけの手で修理を行い、作業効率は悪化する一方。「除草の適期」は刻一刻と過ぎていく中、機械トラブルとの戦いに精神的にも追い詰められる日々でした。
パート3:2017年、運命の出会い「シャフトドライブ式」導入
この状況を打破するため、2017年、大きな決断をしました。 導入したのは、大竹製作所(オータケ)の3条用カルチ中耕除草機。 最大の特徴は、故障の源だったチェーンを排除した**「シャフトドライブ(ドライブシャフト)式」**であることです。
2条から4条へと作業幅を広げると同時に、駆動部をより堅牢なシステムへと刷新しました。これが、私の米作りにおける大きな転換点となりました。

パート4:導入から数年。一度も「故障なし」という驚異の耐久性
シャフトドライブ式の4条用カルチを導入してからというもの、驚くべきことに現在に至るまで一度も故障がありません。
密閉されたシャフト駆動は、泥や草の噛み込みを寄せ付けず、不耕起田の強い抵抗にもびくともしません。
- 止まらない安心感: 故障による中断がなく、最高のタイミングで一気に除草ができる。
- 圧倒的なパワー: 4条一気に、力強く土を攪拌し、クログワイに挑める。
道具の信頼性は、無農薬米の品質に直結します。この「壊れない相棒」のおかげで、今はより精度高く、効率的な除草作業が可能になっています。
メーカー純正アタッチメントで「5条仕様」へ拡張

2017年のシャフトドライブ式導入と同時に、私はさらなる効率化を図るため、メーカー純正のアタッチメントを装着しました。本来の3条用から「5条用」へと仕様を拡張して運用することにしたのです。
一度に5条分の除草ができるスピードは、雑草の成長が早い無農薬栽培において大きな武器になります。しかし、効率と引き換えに、現場では想像を絶する肉体的な負担がのしかかることになりました。
20kg超の鉄塊を持ち上げる、田端での死闘
5条仕様となった除草機は、重量にして20kg以上にもなります。これを田んぼの端まで押し切った後、次の列へ移るために、毎回この鉄の塊を両手で一気に持ち上げなければなりません。
足元はズブズブと深く沈み込む泥の中です。踏ん張りがきかない不安定な状態で、20kg超の機械を持ち上げ、隣の条間へと正確にスライドさせて向きを変える。1往復ごとに繰り返されるこの「持ち上げと旋回」の作業は、全身の筋肉を激しく消耗させる、まさに格闘そのものです。
この重労働の積み重ねが、お米の品質を支える
腕に伝わるエンジンの強い振動と、腰にくるずっしりとした重み。端まで行くたびに訪れるこの重労働は、正直に言えば身体にこたえます。それでも私がこの5条仕様のカルチを動かし続けるのは、今の私にできる最高のタイミングで除草を終わらせることが、稲に良い環境を与え、安全・安心なお米を育てる道だと考えているからです。
理想の「抑草」を目指す、探究のプロセスとして
ただし、私にとってこの除草機を回す作業は、決して最終的なゴールではありません。
かつて冬期湛水と不耕起を組み合わせた田んぼでは、田植え後、一度も除草機を押すことなく収穫まで辿り着いたことがありました。クログワイの種や塊根が水路から用水に乗って入り込み、繁茂する前までは、自然の営みを巧みに利用した見事な抑草の姿がそこにはありました。
本来、自然の力を味方につければ、無理に機械で草を叩く必要はなくなるはずです。私にとって除草機での作業は、その「理想の抑草方法」を確立するまでの大切な繋ぎ。外部から入ってくる雑草の種という現実とも向き合いながら、いつの日か除草機さえ必要としない田んぼを作り上げる。その探究の過程にあるのが、今の私の米作りなのです。

