2008年の栽培記録と気象データ

当農家では、20年以上にわたり無農薬米を農家直販でお届けし、
毎年の栽培記録と気象データを公開してきました。
これは、安心して選んでいただけるよう「栽培の透明性」を大切にしているためです。
このページでは、2008年の無農薬米の作柄と、
伊那谷の気象データ(気温・降水量・日照時間)をまとめています。
農家直販ならではのていねいな栽培履歴をご確認いただけます。
この栽培記録が全国の無農薬米づくりに持つ意味
2008年の結果からは、年ごとに気象条件が変わる中でも、 冬期湛水、土の状態の見極め、肥料管理という要素が 作柄を左右する重要な要因であることが確認できました。 これは全国の自然栽培・無農薬米づくりに共通する重要な原則です。
2008年の生育を左右した要因と圃場ごとの観察
2008年 伊那市の気象と水稲の作柄概況
2008年の伊那市は、水稲の生育期間を通して大きな異常気象は見られず、気温・降水量ともに比較的安定した年であった。伊那市内全体としても、苗の活着や分げつは順調で、登熟期においても極端な高温や日照不足は少なく、作柄は概ね平年並みからやや良好と評価できる年であった。
このような気象条件は、栽培方法の違いによる影響を比較・検証する上でも、外的要因のブレが少ない年であり、圃場ごとの管理や施肥の違いが作柄にどのように現れるかを観察するには適した年であった。
自家製有機発酵肥料の使用終了と施肥体系の変更
2008年は、2007年まで継続して使用してきた自家製有機発酵肥料の使用を終了し、新たな施肥体系へ移行した年である。施肥方法は、「くず大豆+発酵鶏糞」と「発酵鶏糞のみ」の2種類に整理した。
自家製有機発酵肥料の製造と使用を止めた理由は、発酵工程そのものの理解と学習を十分に終えたと判断したためである。発酵の仕組み、微生物の働き、原料の違いによる変化を実体験として学ぶ目的は達成され、次の段階として、作業労力と肥料コストの低減を図ることを重視した。
市販発酵鶏糞に対する評価と仮説
市販の発酵鶏糞は、独特の強い臭いがあるものが多い。この臭いは一見すると未熟さの象徴のようにも感じられるが、別の見方をすれば、まだ発酵の余地があり、微生物にとって格好の餌となる有機物が残っている状態とも考えられる。
この特性が、不耕起田や冬期湛水との組み合わせにおいて、どのような土壌変化をもたらすのかを検証するため、試験的な取り組みを行った。



不耕起田+発酵鶏糞+冬期湛水の試験的取り組み
そこで試験的に、不耕起田に発酵鶏糞を10アール当たり150kg散布し、その後、冬期湛水を開始した圃場を設けた。春になってから代掻きを行い、通常どおり田植えを実施した。
この圃場では、生育期間を通じて雑草の発生が極めて少なく、除草作業が不要なほどであった。不耕起、発酵鶏糞、冬期湛水という条件の組み合わせが、雑草の発芽・生育を強く抑制したものと考えられる。
施肥量と稲体反応の違いから見えた課題
一方で、「くず大豆+発酵鶏糞」を施用した圃場では、刈取り時期になっても稲の黄化が進まず、明らかに窒素肥料の効き過ぎの状態であることが確認された。成熟期における過剰な窒素供給は、登熟や食味の面で不利に働く可能性がある。
これに対し、発酵鶏糞のみを施用した圃場では、刈取り時期にちょうどよい具合に黄化が進み、穂ぞろいも良好で、穂は重く垂れ下がっていた。稲体の色や姿からも、養分供給と生育のバランスが適切であったことがうかがえる。
2008年の考察まとめ
2008年の観察から、発酵鶏糞は単独施用であっても、不耕起田や冬期湛水と組み合わせることで、水稲の生育に十分な養分を供給できることが明らかとなった。また、くず大豆を併用した場合には、窒素過多となるリスクがあることも確認できた。
この年は、自家製有機発酵肥料から市販資材への移行が、単なる省力・低コスト化にとどまらず、施肥量の適正化や生育の安定につながる可能性を示した重要な年であったと言える。
圃場別栽培条件
| 圃場(正式名) | 一本松5488 | 一本松5491 | 中原5513-2 | 中原4843 | 中原8863 |
|---|---|---|---|---|---|
| 圃場 | A | B | C | D | E |
| 作付品種 | コシヒカリ/古代米 | コシヒカリ/古代米 | 白毛もち | コシヒカリ | コシヒカリ |
| 栽培方法 | 肥料(くず大豆+発酵鶏糞)→半不耕起→除草 | 肥料(くず大豆+発酵鶏糞)→半不耕起→除草 | 冬期湛水→肥料(くず大豆+発酵鶏糞)→半不耕起→除草 | 肥料(くず大豆+発酵鶏糞)→半不耕起→除草剤 | 冬期湛水→肥料(発酵鶏糞)→代掻き |
| 備考 |
2008年の栽培記録
| 日付 | 作業内容 | 圃場 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2007/12/24 | 元肥散布 | E | 発酵鶏糞300kg |
| 2007/12〜 | 冬期湛水 | C, E | |
| 3/19 | 元肥散布 | A | くず大豆175kg / 発酵鶏糞375kg |
| 3/19 | 元肥散布 | B | くず大豆125kg / 発酵鶏糞300kg |
| 3/19 | 元肥散布 | D | くず大豆150kg / 発酵鶏糞450kg |
| 3/22〜3/29 | 浸種 | 屋外 | |
| 3/30 | 元肥散布 | C | くず大豆75kg / 発酵鶏糞225kg |
| 3/30 | 播種 | 屋外 | |
| 3/30〜5/3 | プール育苗 | ハウス | |
| 4/5 | 半不耕起 | C, D | |
| 4/6 | 半不耕起 | B | |
| 4/6 | 入水 | B | |
| 4/12 | 半不耕起 | A | |
| 4/12 | 入水 | A | |
| 4/19 | 入水 | D | |
| 4/19 | 代掻き | A, B, C, D, E | |
| 4/26 | 代掻き | A, B, C, D, E | |
| 5/4 | 田植え | A, C | |
| 5/5 | 田植え | B, D, E | |
| 5/4〜9/4 | 水管理 | A, B, C, D, E | |
| 5/17 | 除草 | D | 除草機 |
| 5/18 | 除草 | D | 除草機 |
| 5/6 | 除草 | A, B | 除草剤エリジャン乳剤 |
| 5/24 | 除草 | A, B | 除草剤ヒエクリーン |
| 9/5 | 落水 | A, B, C, D, E | |
| 9/22〜9/23 | 稲刈 | A | コシ:バインダー |
| 9/24 | 稲刈 | C | コシ:コンバイン |
| 9/24 | 稲刈 | D | コシ:コンバイン |
| 9/24 | 稲刈 | E | コシ:コンバイン |
| 9/25 | 稲刈 | B | コシ:コンバイン |
| 11/2 | 稲刈 | A | 赤米 |
| 11/2 | 稲刈 | B | 香り米 |
| 9/23〜10/11 | 乾燥 | A | コシ、天日干し |
| 9/25 | 乾燥 | C | 機械乾燥 |
| 9/25 | 乾燥 | D | 機械乾燥 |
| 9/25 | 乾燥 | E | 機械乾燥 |
| 9/26 | 乾燥 | B | 機械乾燥 |
| 10/12 | 脱穀 | A | コシ:脱穀機 |
| 10/14 | 脱穀 | B | コシ:脱穀機 |
| 11/24 | 脱穀 | A | 古代米:脱穀機 |
2008年 伊那市の月ごとの気象データ
| 月 | 平均気温 (°C) | 降水量 (mm) | 日照時間 (時間) |
|---|---|---|---|
| 1月 | 2.0 | 55 | 125 |
| 2月 | 3.5 | 45 | 135 |
| 3月 | 6.5 | 70 | 155 |
| 4月 | 10.5 | 75 | 185 |
| 5月 | 15.2 | 90 | 205 |
| 6月 | 19.5 | 130 | 200 |
| 7月 | 24.8 | 160 | 210 |
| 8月 | 25.0 | 140 | 215 |
| 9月 | 19.0 | 120 | 185 |
| 10月 | 12.5 | 75 | 170 |
| 11月 | 6.5 | 60 | 145 |
| 12月 | 2.5 | 50 | 135 |
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- 2007年の栽培記録↗
- この年の経験は、その後の無農薬米栽培における栽培方法の判断に大きな影響を与えています。
→2009年の栽培記録はこちら - 2010年の栽培記録↗


